伝統ある造園の職業につきたいと考えている方に、どんな方が造園業に向いているのかをお伝えいたしますが、まずは造園の歴史を知ることが非常に重要です。
どのように造園という庭づくりが遷移してきたのか。そして今の造園という位置づけは何なのか。
そのため、まずは造園の歴史についてお伝えいたします。

氏永 勝之
監修者 smileグループCEO
株式会社ガーデンメーカー 代表取締役
愛知農園植木苗木株式会社 専務取締役
一般社団法人ガーデンビジネス協会 代表理事
氏永 勝之

愛知県稲沢市生まれ。稲沢市が「日本四大植木産地」であることもあり、幼少期か ら植木に囲まれて成長。
東京農業大学卒業後、名古屋市内の造園会社に就職。 公園の設備工事から国交省事業の国道整備工事における土木及び街路樹等の植 栽工事に現場代理人として携わる。

執筆者 お庭の窓口(転職情報)編集部

お庭の窓口転職情報の編集部です。 社内の造園・外構のプロたちから助言をいただきつつ、皆様に有益な情報を提供できるように頑張ります。

目次

移植



造園の歴史

造園の職業は非常に歴史が長く、古くは飛鳥時代から日本庭園の基礎となる庭園作りがあったことが分かっています。
時代ごとに見ていきましょう。

平安時代の造園

その時代時代で庭園の世界観は変わり、平安時代には池泉庭園という浄土式庭園という様式が現れました。
京都の宇治平等院の庭園は、浄土式庭園の代表的なものとされています。

鎌倉時代の造園

武家社会が始まった鎌倉時代の庭園では、池泉舟遊式であったものが、後に回遊式の庭園が作られ始めました。
京都天龍寺の庭園はその代表的な庭園とされています。

室町時代の造園

室町時代の庭園は平安・鎌倉時代からの流れをくみつつ、日本庭園の中で一番有名である石と白砂だけで表現した枯山水という新しい様式が現れました。
岩や砂利などを配置することによってそこにはない水の流れなどを想像させる特徴をもつ庭園スタイルです。
京都の龍安寺に代表される石庭は今も訪れる人を魅了しています。

安土桃山時代の造園

安土桃山時代には千利休によって茶道が完成し、茶室に付随した露地と呼ばれる茶庭の様式も現れ、現在でも庭造りの参考にされています。
特に石組などは、室町期の質実剛健さに加えて、華麗なまでの石組構成を見せるのが、安土桃山時代の庭園の特徴の一つと言われています。

江戸時代の造園

江戸時代になるとあらゆる大名による「大名庭園」が発展します。各地諸藩の大名の邸宅や別荘に設けられた庭園の総称です。大名どうし、競い合って贅を尽くして庭を作っていたようです。
名園とされる金沢兼六園や岡山後楽園、東京の小石川後楽園などは、代表的な池泉回遊式庭園として今も多くの観光客が訪れています。

明治時代以降の造園

(ドイツの日本庭園)

明治時代以降、諸外国との本格的な外交関係が始まったことを機に、日本庭園は欧米でも人気を博し、海外でも造られるようになりました。

造園とは、このように非常に長い歴史があります。
しかしながら現在の造園は、このような歴史ある日本庭園作りを行う機会が少なくなっていることから、後世に、日本庭園の重要な要素である、石や樹木の配置技術を伝え、引き継いでいく機会さえ少なくなっています。

現代の代表的なお庭

現代の庭づくりと言えば、日本庭園ほどの高度な技術を必要としない、洋風住宅に合うシンプルなエクステリアや雑木風のお庭などが中心となっています。
いわゆる石組みや池などの高度な技術は必要とはしないとはいえ、新たな資材や工法を取り入れた造園(外構含む)が創造されてきています。
そのため、これからは新しい造園を学んでいかなければいけません。

これから造園の世界に飛び込もうと考えている方には、ぜひこれら良き伝統を引き継ぎながらも、新しい庭園作りというものを受け入れ、創造していっていただきたいと思います。

造園工事業界の現状

まず初めに造園業界の動向についてお伝えいたします。

下のグラフは、造園工事業の許可業者数と、建設業全体の許可業者数の推移を調査したデータです。
造園業者数、全体の許可業者数ともに減少傾向にあることがうかがえます。

建設業許可業者数調査の結果について
出典:国土交通省「建設業許可業者数調査の結果について」

とはいえ、一方で今後も一般顧客、公共事業共に緑がある限り常に需要はあります。
また、リニアや大規模開発の影響で建設業は常に人手不足の状況が続いていますので、業界として仕事がなくなるということは当面考えにくいでしょう。

むしろ造園業は植物という生き物を相手にする唯一の建設業のため、生き物であるがゆえに毎年リピートのある建設業の中でも珍しいリピート産業であり、地球上に緑が存在する限り続くきわめて永続性の高い職業だと言えます。

現在では、造園業界も同じく人手不足のため、売り手市場となっています。

造園職人(庭師)の仕事に向いている人

造園 業界

職場環境~外が好きで体力がある

自然に触れたい、自然とともに生きていきたい、そう感じる人は造園業は向いています。
夏は炎天下、冬は寒い中で作業を行いますので、体力は非常に重要です。(雨の日や雪の日は比較的休みになります。)
また、石や樹木など、重い物を持つ力も必要です。そんな環境に耐えられる肉体を持つ人は、庭師に向いているでしょう。

しかし、体力がない方でも大丈夫!公共工事や大規模民間工事を主とする造園の元請け会社に就職することで、職人ではなく、施工代理人や営業として働くことも出来ます。

希望する会社がどのような形態の会社なのかを確認する必要があると言えますね。
庭師として一般住宅の庭づくりをしたいのに入ったはいいが、その造園会社は公共工事主体の施工管理会社だったという話はよくある話です。

自然や植物が好き

きれいな木を植えても、その場所の自然(環境)に適応していなければ、良さは活かされず、すぐに枯れてしまいます。
「自然」とひとことで言っても、季節や天候、風向き、日当たり、土の状態、草木の特徴、そこに生息する虫や動物についてなど、表す範囲は実に幅広いものです。

そのため、造園に携わるならば、樹木についての知識をどん欲に吸収していく関心がなければ、続けていくのは難しいでしょう。

まずは、樹木を見て木の名前が分かるように努力しましょう。

創作意欲・美的センスのある人

デザインは設計士かと思うかもしれませんが、庭の手入れや庭づくりなど、庭に関しては図面通りにいかない場合がほとんどです。
現場合わせと言って、現場のサイズや地盤の高さなど含めて、現場に合わせて木を植えたり石を置いたりしていきます。

そのため、庭師に求められるスキルはさまざまです。
専門的な知識や能力だけでなく、美しい庭を造ったり、剪定などのメンテナンスをしたりと、様々な場合において美的センスも求められます。

また、剪定の際に雑木や花木を仕立てる際は、スキルだけでなく視覚的バランスがとても重要になります。
なぜそこの枝を切るのか切らないのかを言語化できるようになると一人前です。

資格を取り、技術を磨く

造園技能士 資格

1級造園技能士、1級造園施工管理技士、重機や機械の運転免許や技能講習などを取得しておくと就職に有利です。

職人を目指す方には造園技能士、施工代理人を目指す方には造園施工管理技士を取得しておけば、どの造園会社でも就職に有利になります。
なお、それら資格の試験は年々難しくなっていると言われています。
特に1級の造園施工管理技士は非常に難易度の高い資格の一つです。

また、日本庭園を本格的に扱う造園会社は年々減っており、個人邸の日本庭園造りの施工も1年に1回あるかないかという会社が多いですが、雑木風の庭や洋風の混植など、今の住宅にあった造園工事が主となっています。
そのため、しっかりとした知識と技術を身に付けることはいずれにしても重要です。

一方で、1級造園施工管理技士を保有していると大規模な公共事業に関わることが出来ます。公共事業の造園工事は今後も一定の受注が見込めますので、施工管理者として安定して造園業に関わることができます。

まとめ:造園業の中でも会社によって多種多様な分野に分かれる

造園の会社には個人邸庭の手入れ施工専門、個人邸庭づくり施工専門、公共事業やゼネコン工事の施工専門、公共事業やゼネコン工事の施工管理専門など、多種多様な造園会社が存在します。

まずはあなた自身がどの様な働き方をしたいのかを決めた上で、専門性を求めず、オールマイティーに働ける人になることが今の造園業界には重要です。

庭づくりはやらない、街路樹剪定はやらない、施工管理の仕事は経験が無いからやらないなど、仕事に対して壁を作らず、何でもチャレンジしてやってみることが造園工としての幅を広げることになります。

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