
造園会社の種類を仕事内容別に紹介!工事と業務の違いとは?
造園会社は、人が癒される環境を造ったり、造られた環境を管理したりするのが仕事です。
一般的に、環境を造ることを工事、環境を管理することを業務といいます。
人が生活する環境には、住宅・会社・地域・都市など様々なステージがあります。造園会社はそれぞれのステージで、心地よく快適な環境のために仕事をしています。
造園業は建設業の一種ですが、土木や建築との違いは、「生きもの」や「風物」を扱うことが多いということです。この違いは、造園会社の仕事を理解する上で非常に重要です。
造園会社を分析するために、造園会社の種類を、仕事内容別に見ていきましょう。
造園会社の種類のまとめ(仕事内容、公共・民間、元請・下請)についてはこちらをクリック
※風物とは自然や季節を感じさせる景色や産物のこと
造園会社の工事を公共と民間で比較

造園工事には、さまざまな種類がありますが、大きく公共工事と民間工事に分けることができます。この2つを比較することで、造園会社が携わる工事の全体像が見えてくるはずです。
特に公共工事では、樹木の樹高・幹周・葉張、植穴寸法や植栽基盤(土壌改良)などが厳格に定められていて、工事全般において発注者の検定に合格するものでなければなりません。
公共工事に多い仕事内容

公共工事の発注者は、国や地方自治体です。
公共工事では、発注者から提示される「仕様書」や「設計図面」に基づいた施工が必要です。また、資源の再利用や産廃処分の適正化など、環境に配慮した施工が求められます。
公園整備工事
公園整備工事には、新規に公園を造る工事だけでなく、既成の公園内の遊具や園路、設備などの更新も含まれます。
公共工事の対象となる公園には種類があり、使用目的や大きさには標準があります。その中で代表的なものを紹介しましょう。
- 街区公園|街区居住者の利用が目的で面積は標準で0.25ha
- 地区公園|徒歩圏内の居住者の利用が目的で面積は標準4 ha
- 総合公園|都市住民全般の利用が目的で面積の標準は10~50 ha
- 広域公園|広域のリクレーション需要を充足するのが目的で面積50 ha以上が標準
- 国営公園|都府県の区域を超える広域的な利用が目的で面積300 ha以上が標準
「緑地」や「緑道」と呼ばれる、環境の保全や災害時の避難対策などのために設けられる「緩衝緑地帯」も公園整備工事の一環として、造園会社が携わることが多い公共工事です。
道路植栽工事
道路にも種類があります。造園会社が公共工事で携わる道路の主な種類は以下になります。
- 高速自動車国道
- 一般国道
- 都道府県道
- 市町村道
① の高速自動車国道の事業主体は、高速道路機構及び高速道路株式会社になります。
これらの道路工事で、造園会社が携わるのは、道路や関連施設にある緑地帯に樹木や低木、芝生を植栽する仕事です。
道路の植栽工事に限らず、最近の公共工事では、工事内容のすべてを電子成果品として発注者と共有することが一般的になりつつあります。
特に①~③の工事では、ほぼ電子納品なので、その対応ができないと公共工事は受注できなくなっています。
※電子成果品とは、各電子納品要領に基づいて作成した電子データのことをいいます。
法面植生工事
法面(傾斜面)植生工事は、法面保護工事の一種です。
法面保護工は、さまざまな法面の崩落防止や開発行為でできた法面の自然回復のために施工されます。
法面保護工には、植生工と構造物工があります。
法面保護工では植生工が優先され、構造物工は植生に不適な土質条件、現地状況などで安定勾配が確保できないなどの場合に採用されることがほとんどです。
造園会社が施工することの多い植生工には、播種工と植栽工があります。
- 播種工|種子散布工・厚層基材吹付工・植生シート工・植生土嚢工など
- 植栽工|張芝工・筋芝工・植栽(樹木や草花)工など
ちなみに、構造物工の代表的なものには、プレキャスト枠工・コンクリート吹付工・グラウンドアンカー工などがあります。
民間工事に多い仕事内容

民間工事に多い仕事内容を見ていきましょう。
個人邸庭園工事
かつて個人の庭といえば、住宅から眺めて楽しむための修景としての庭が主流で、使用される樹木もマツやオンコなどの仕立て品が中心でした。
現在では、自然の樹形や生長を楽しむナチュラルガーデンが多くなり、住む人が積極的に庭に関わるスタイルに変化しています。以下は、その一例です。
- リビングガーデン|家族がくつろいだり語り合ったりすることができる庭
- キッチンガーデン|野菜や果実を育て収穫することができる庭
- スモールガーデン|狭小スペースをプランターや雑貨で飾る庭
また、造園会社だから庭のことだけ考えていればいいという時代ではなくなりました。住宅や外構とのバランスなどを考慮しながら、お客様の要望やライフスタイルに応えられるような提案をすることが必要になっているのです。
緑地帯整備工事
会社や工場、ホテルや複合商業施設などの緑地帯の植栽は、造園会社にとって重要な仕事の一つです。ただ、大規模な施設になればなるほど、ゼネコンや建築会社の下請として施工することが多くなります。
建築工事は、大手のゼネコンや建築会社が元請として一括して受注することがほとんどだからです。その後に、元請は各工種を専門業者に下請させ、全体的な工期・品質・安全などの管理をします。
また、民間工事では、専門業者としての知識や経験が求められることが多くなります。公共工事と違って、厳格な仕様や基準がない場合が多いからです。
品質は落とさず、費用を抑えるVE案を提案できる業者ほど、重宝がられるのも民間工事の特徴といえます。
造園会社の業務を公共と民間で比較

造園会社の業務としての仕事内容は、公共と民間で大きな違いはありません。以下に、代表的な仕事内容をまとめました。
- 樹木に関する業務|消毒・施肥・草取・剪定・冬囲いなど
- 草花に関する業務|消毒・施肥・潅水・草取・花がら摘みなど
- 芝生に関する業務|殺菌剤散布・施肥・潅水・芝刈など
公共の業務に多い仕事内容

公共の業務では、年間のスケジュールが仕様書として、あらかじめ提示されます。そのスケジュールに基づき、遅滞なく業務をこなさなければなりません。
また、公共工事と同じように、業務報告書や状況写真を電子成果品として提出することになります。
公園緑地維持業務
公園や緑地の種別については、前述の通りです。
公園に植栽されている樹木や草花は、運営管理する国や自治体の財産です。特に樹木は、1本1本が台帳に記載されていていますから、枯れてしまったからといって勝手に伐採したりはできません。
その他、そんな些細なことと思われることも、管理者に報告して協議してからの対応となります。
道路植樹帯草刈業務
道路についても、公園と同じように、国や自治体が管理しています。
道路に関して、造園会社が行う業務は、歩道に設けられた植樹枡に植えられた樹木(高木・低木)に関するものがほとんどになります。
ただ、歩道の縁石周りや中央分離帯に発生する雑草などは、道路本体の維持業務を行う業者(土木会社など)が行うのが一般的です。
指定管理者制度による業務
指定管理者制度とは、公共施設の管理を民間会社に業務委託することをいいます。民間企業のノウハウを活用することで、サービスの向上と経費の節減を図るために、平成15年に創設されました。
公共施設の緑に関することだけを業務としていた造園会社が、施設本体の管理にも参加するという仕組みとなっています。
民間の業務に多い仕事内容

民間の業務に多い仕事内容について紹介します。
個人邸庭園維持業務
個人邸の庭園維持業務は、おなじみの「街の植木屋さん」のイメージに一番近い仕事でしょう。
春先に、例年通りに仕事をしていいか確認した後、1年に何度か訪問して仕事をするのが一般的です。
同一の庭を継続して管理することは、庭木1本1本の状態に合わせた対応が可能になると同時に、「生きもの」や「風物」を扱う職人の技能を高めるのに最適な場でもあります。
民間施設の構内緑地維持業務
民間施設の業務では、年度初めに、契約書を交わして仕事をすることが多いです。
民間会社は、景気に左右されることが多いので、予算を削られることも珍しくありません。予算に合わせて、業務の内容を変更しつつ、構内緑地の見栄えを損なわないような工夫をするのも造園会社の腕の見せどころとなります。
まとめ

造園会社の仕事内容を、公共と民間、工事と業務で比較しながら紹介しました。
公共では仕様書・設計図面・電子成果品などが仕事をするうえで重要なポイントになり、民間では専門業者としての知見や予算に合わせた提案が評価につながります。
この2つは、現場作業者・施工管理者・営業いずれの仕事をするにせよ、役立つ情報であることは間違いないはずです。
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